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んでおります。この山腹に居住している農耕民が山林を焼き払い、その灰を肥料として移動しながら、陸稲その他を作っているのです。
ところがこの傾斜地で焼畑農業が行われることで、雨が降った場合に、洪水や土壌劣化が引き起こされるのです。土中栄養素が流出し、森林の再生が非常に困難になる、という問題が起こってきます。この森林破壊の防止は、単にラオス一国に重要な問題ではありません。まわりの国々にとってラオスの森林破壊が大変な影響を及ぼすことになるのです。ラオス国の森林保全が周辺国の電力、水の安定確保、洪水防止などに重要になってきます。
問題は2つあります。移動耕作によって発生する森林破壊をいかに防ぐかという問題。もう1つの問題は60%の人口が住んでいるメコン川流域の平原の米の生産性が低いということです。その生産性は、日本の半分以下です。この水田農業の生産性をいかに高めるか。これを実現することで米の輸入をなくせます。これをいかに実現するかが重要な問題となってきます。
最初の課題であります森林破壊は、移動耕作による焼畑によってもたらされると考えられております。北部山岳地域で人口増加が生じ、移動耕作の頻度が高くなり、土壌流出が起こる。その結果、必ずしも環境破壊的ではなかった焼畑が環境破壊を引き起こすという問題を生み出すのです。したがいまして、この問題をどう防ぐか、が課題となります。
今回の調査は期間的にも限定されておりました。この限定の中で、調査を行うために首都ビエンチャンから航空機で交通の便がよいルアン・パバン県を調査対象地として選定しました。
この移動耕作の頻度があがり、休閑期間が短くなり焼畑が環境破壊的なものとなるのは、その地域の農業の生産性が低いためです。生産性が低いため、土地が集約的に利用できず、他に方法がないために移動耕作の期間を短くする結果、土壌流出が生じてきているのです。
これらの問題の実情を把握し、解決法を見出すために調査を行いました。その調査を行う上で、調査対象地を選定しました。まずルアン・パバン県の農業部のご協力を得て、対象地域の6ヶ村長に対する調査を行い、その結果をもとに、村民からの聞き取り調査を行う2ヶ村を選定しました。この2ヶ村は、
1) 幹線から3?qぐらいの幹線から近い村。
2) 幹線から20?qぐらいの遠い村。という特色を持った村です。この2ヶ村で農民に対する聞き取り調査を行いました。
ラオスの場合、道路からの距離がインフラストラクチャーのすべてを規定しているという現状があります。道路の制約によって農業投入物、肥料や農薬などの入手が限定され、さらに生産物の販売も制限されるのです。

 

 

 

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